はじめに:暗黙知・形式知とは?
私たちは日々、様々な知識を活用して生活しています。 その知識は、大きく分けて暗黙知と形式知の2種類に分類できます。 暗黙知は、経験や勘に基づいており、言語化が難しい知識です。 一方、形式知は、言語や図表で表現できる、体系化された知識を指します。 この記事では、暗黙知と形式知の違いを詳しく解説し、知識創造プロセスを促進するSECIモデルについてご紹介します。
暗黙知と形式知:それぞれの特徴と具体例
暗黙知と形式知は、知識の種類を理解するための重要な概念です。
それぞれの特徴を理解することで、より効果的な知識マネジメントが可能になります。
暗黙知の特徴
暗黙知は、個人の経験や勘、ノウハウに根ざした知識であり、言語化や形式化が難しいという特徴があります。
職人の技術や、長年の経験によって培われた営業のコツなどが、暗黙知の代表例です。
暗黙知は、マニュアル化が難しく、個人の能力に依存する部分が大きいです。
しかし、暗黙知こそが、組織の競争力の源泉となることも少なくありません。
例えば、熟練した医師の診断能力は、教科書的な知識だけでなく、長年の経験によって培われた暗黙知に支えられています。
暗黙知を共有するためには、OJTやメンター制度など、直接的なコミュニケーションを通じて伝承していく必要があります。
形式知の特徴
形式知は、言語や数式、図表などを用いて表現できる知識です。
マニュアル、仕様書、論文などが形式知の代表例です。
形式知は、誰でも理解しやすく、共有や再利用が容易であるというメリットがあります。
形式知は、データベース化やナレッジマネジメントシステムへの登録を通じて、組織全体で共有することができます。
例えば、製品の設計図やプログラミングのコードは、形式知として明確に表現されています。
形式知は、教育や研修を通じて効率的に伝達することができます。
暗黙知と形式知の比較表
暗黙知 | 形式知 | |
---|---|---|
定義 | 経験や勘に基づく、言語化が難しい知識 | 言語や図表で表現できる、体系化された知識 |
例 | 職人の技術、営業のコツ、勘 | マニュアル、仕様書、論文 |
共有方法 | OJT、メンター制度、直接的なコミュニケーション | データベース、ナレッジマネジメントシステム、教育 |
特徴 | 属人的、伝承に時間がかかる、競争力の源泉 | 客観的、共有しやすい、効率的な伝達 |
SECIモデルとは?知識創造のプロセス
SECIモデルは、暗黙知と形式知が相互に作用しながら、組織的な知識創造を促進するプロセスをモデル化したものです。 SECIモデルは、共同化(Socialization)、表出化(Externalization)、連結化(Combination)、内面化(Internalization)の4つの段階で構成されています。
共同化(Socialization)
共同化は、経験を通じて暗黙知を共有するプロセスです。
OJTやブレインストーミング、雑談などを通じて、メンバー同士が互いの経験や知識を共有し、共感することで、新たな暗黙知が生まれます。
例えば、新入社員が先輩社員の指導を受けながら業務を習得する過程や、チームメンバーが互いのアイデアを出し合う会議などが、共同化の例として挙げられます。
表出化(Externalization)
表出化は、暗黙知を形式知に変換するプロセスです。
インタビューやアンケート、ワークショップなどを通じて、個人の持つ暗黙知を言語化、図式化し、形式知として表現します。
例えば、熟練した技術者のノウハウをマニュアル化したり、顧客のニーズを分析して商品企画書を作成したりするなどが、表出化の例として挙げられます。
連結化(Combination)
連結化は、複数の形式知を組み合わせて、新たな形式知を創造するプロセスです。
既存の知識を整理、分析し、再構成することで、新たな視点やアイデアが生まれます。
例えば、複数の市場調査データを分析して新たなマーケティング戦略を立案したり、複数の特許情報を組み合わせて新たな技術を開発したりするなどが、連結化の例として挙げられます。
内面化(Internalization)
内面化は、形式知を個人の暗黙知として取り込むプロセスです。
研修や読書、実践などを通じて、形式知を理解し、自分の経験と結びつけることで、新たな暗黙知が形成されます。
例えば、研修で学んだ知識を実際の業務で活用したり、読書を通じて得た知識を自分の考えに取り入れたりするなどが、内面化の例として挙げられます。
SECIモデルのサイクル
SECIモデルは、これらの4つのプロセスが相互に作用し、循環することで、組織的な知識創造が継続的に行われることを示しています。
共同化によって生まれた暗黙知が、表出化によって形式知に変換され、連結化によって新たな形式知が創造され、内面化によって個人の暗黙知として蓄積されるというサイクルを繰り返すことで、組織全体の知識レベルが向上します。
SECIモデルを活用した知識創造の事例
SECIモデルは、様々な企業や組織で活用され、成果を上げています。
例えば、ある製造業の企業では、熟練技術者の暗黙知を形式知化し、若手技術者の育成に活用することで、技術力の底上げに成功しました。
また、あるIT企業では、顧客からのフィードバックを分析し、新たなサービス開発に活かすことで、顧客満足度を向上させました。
これらの事例からわかるように、SECIモデルは、組織の知識創造を促進し、競争力を高めるための有効なツールとして活用できます。
まとめ:暗黙知と形式知を理解し、SECIモデルで知識創造を加速しよう
暗黙知と形式知は、知識の種類を理解するための重要な概念です。
SECIモデルは、暗黙知と形式知が相互に作用しながら、組織的な知識創造を促進するプロセスをモデル化したものです。
SECIモデルを活用することで、組織全体の知識レベルを向上させ、競争力を高めることができます。
ぜひ、あなたの組織でもSECIモデルを活用し、知識創造を加速させてください。