建設業の資金繰りが苦しくなる最大の原因は、工事代金の入金より先に、材料費・外注費・人件費の支払いが来ることです。
改善のポイントは、前払金や出来高払いで入金を早めること、工事ごとの資金繰りを見える化すること、そして足りない期間をつなぐ資金調達手段を持っておくことの3つです。
この記事では、建設業ならではの資金繰りの難しさと、知っておきたい建設業法の支払ルール、すぐに取り組める改善策、工事代金の入金を待てないときの資金調達方法までまとめました。今月の支払いに困っている方は、資金調達方法の比較表から確認してみてください。
建設業の資金繰りが苦しくなりやすい理由
建設業は、ほかの業種と比べても資金繰りが難しい業種といわれます。売上や利益が出ていても手元の現金が足りなくなるのは、業界特有の構造があるからです。代表的な理由を見ていきましょう。
工事代金の入金までの期間が長い
建設工事は、着工から完成・引き渡しまでに数か月かかることも珍しくありません。そのうえ、完成後に検査を受け、請求書を出してから、さらに「月末締め翌月末払い」「翌々月払い」といった条件で入金されるのが一般的です。
つまり、工事に着手してから代金が入金されるまで、半年近くかかるケースもあるということです。元請から下請、さらに孫請へと続く重層構造では、上流での支払いの遅れが下流に連鎖しやすく、下請の立場ほど入金が遅くなる傾向があります。
材料費・外注費・人件費の立て替えが大きい
一方で、支払いは工事の進行とともに次々に発生します。資材の購入代金、協力会社への外注費、職人や従業員の給料、重機のリース料など、工事代金が入る前に多額の立て替えが必要です。
特に職人への支払いは、月払いや日払いが多く、先送りできません。「工事代金の入金は数か月先なのに、給料は毎月支払う」というずれが、建設業の資金繰りを苦しくする根本的な原因になっています。
大型工事の受注や受注の波がある
皮肉なことに、大きな工事を受注したときほど資金繰りは厳しくなります。工事の規模が大きいほど立て替える金額も膨らむからです。「受注が増えて売上は過去最高なのに、手元のお金が足りない」という状況は、建設業では珍しくありません。
たとえば、請負金額3,000万円の工事で、材料費や外注費などの原価が2,500万円かかるとします。原価の多くを工事期間中に支払い、代金は完成後の翌々月にまとめて入金されるとすれば、その間は数千万円規模の立て替えが続く計算です。同じ時期に別の工事も動いていれば、必要な運転資金はさらに膨らみます。
また、公共工事の発注時期や季節によって受注に波があるのも建設業の特徴です。閑散期にも固定費はかかり続けるため、繁忙期に得た利益を閑散期に取り崩す形になりやすく、年間を通した資金計画が欠かせません。
資材価格や人件費の上昇
近年は資材価格の高騰や、人手不足による人件費の上昇も資金繰りを圧迫しています。契約時の見積もりより実際のコストが上がると、そのぶん利益が削られ、立て替えの負担も大きくなります。
契約後に価格が上昇した場合の取り扱いを、あらかじめ契約書に盛り込んでおくことも大切です。価格変動への備えがないまま工期の長い工事を受注すると、完成したときに赤字になっていたということにもなりかねません。
加えて、2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。工期を守るために人員を増やしたり、週休2日に対応したりすると、そのぶん人件費は増えるでしょう。こうしたコストの増加を請負金額に反映できないと、利益が減り、資金繰りにも影響が出ます。
建設業の資金繰りが悪化しているサイン
資金繰りの悪化は、突然表面化するように見えて、実は前兆があることがほとんどです。次のようなサインに心当たりがあれば、早めに対策を始めましょう。
- 工事が完了するたびに、次の工事の立て替えで預金残高がほぼゼロになる
- 職人や協力会社への支払日が近づくと、入金予定を何度も確認している
- 受注は増えているのに、手元の現金は増えていない
- 資材の仕入れ先への支払いを、待ってもらうことが増えてきた
- 税金や社会保険料の納付を後回しにしている
- 前の工事の支払いのために、次の工事の前払金をあてにしている
特に最後のように、次の工事の入金で前の工事の支払いをまかなう状態は危険です。受注が途切れた瞬間に、資金が回らなくなってしまいます。こうしたサインに早めに気づければ、融資のように時間のかかる手段も間に合い、低いコストで資金繰りを立て直せる可能性が高まるでしょう。
建設業の下請代金の支払ルールを知っておこう
下請として工事を請け負う場合、代金の支払いには建設業法でルールが定められています。自社が不当に長い支払条件を押し付けられていないか確認するためにも、基本を押さえておきましょう。
まず、元請負人は、注文者から出来高払いや竣工払いを受けたときは、下請負人に対して、その支払いを受けた日から1か月以内のできる限り短い期間内に代金を支払わなければなりません。
さらに、元請が特定建設業者で、下請が一定規模以下の事業者である場合は、下請が工事の完成を確認して引き渡しを申し出た日から50日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定める必要があります。この期日までに支払わない場合、元請は年14.6%の遅延利息を支払わなければなりません。
手形についても、国土交通省は令和6年11月から、手形期間が60日を超える手形の交付を行政指導の対象としています。政府は手形そのものの利用廃止を目指しており、電子記録債権や現金払いへの移行が進んでいる状況です。支払条件に疑問がある場合は、国土交通省の各地方整備局などに設けられた相談窓口に相談できます。
建設業の資金繰りを改善する方法
ここからは、建設業の資金繰りを改善する具体的な方法を紹介します。まずは、それぞれの方法の特徴を比較しておきましょう。
| 方法 | 効果が出るまで | コスト | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 前払金・中間前払金の活用 | 契約時・工期半ば | 保証料がかかる | 公共工事を受注している |
| 出来高払い・支払条件の交渉 | 次の契約から | 基本なし | 工期の長い民間工事が多い |
| 工事ごとの資金繰り表 | すぐに始められる | 基本なし | すべての建設会社 |
| 工事代金のファクタリング | 最短即日 | 手数料 | 今月の支払いに間に合わせたい |
| 公庫・制度融資 | 数週間程度 | 低めの金利 | 1か月以上先の資金不足に備えたい |
公共工事の前払金・中間前払金を活用する
公共工事を受注しているなら、必ず活用したいのが前払金制度です。国や地方公共団体の公共工事では、請負代金の一定割合(一般的に40%)を着工前に受け取れる仕組みがあります。受け取るには、前払金保証事業会社の保証を付けなければなりません。
さらに、工期の半ばで請負代金の20%を追加で受け取れる中間前払金制度もあります。当初の前払金と合わせると、合計で6割を工事の完成前に受け取れる計算です。利用するには、工期の2分の1を経過していること、出来高が請負代金の2分の1以上に達していることなどの要件を満たす必要があります。発注者によって導入状況が異なるため、契約時に確認しておきましょう。
出来高払いや支払条件を交渉する
民間工事でも、工期が長い工事では、工事の進み具合に応じて代金を受け取る出来高払いや、着手時に一部を受け取る着手金を交渉してみましょう。完成時の一括払いに比べて、立て替えの負担を大きく減らせます。
交渉するときは、工程表と支払いのスケジュールをセットで提示すると、発注者も判断しやすくなります。資材の価格変動が大きい工事では、価格が一定以上変動した場合に代金を見直す条項を入れておくことも、リスクを抑える有効な方法です。
あわせて、取引先の支払能力にも目を配りましょう。元請の倒産や支払遅延に巻き込まれると、立て替えた費用を回収できなくなるおそれがあります。初めて取引する元請の場合は、信用調査会社の情報や業界での評判を確認し、1社に売上が集中しすぎないよう受注先を分散させておくと、万一のときの影響を小さくできます。
工事ごとの資金繰り表を作る
建設業の資金繰りを安定させるには、会社全体だけでなく工事ごとに入金と支払いの時期を把握することが大切です。どの工事で、いつ、いくら立て替えが発生し、いつ回収できるのかを一覧にすれば、資金が足りなくなる時期を事前に予測できます。
新しい工事を受注する前に資金繰り表で確認する習慣をつければ、立て替えが重なって資金がショートする事態も防げるはずです。受注するかどうかの判断材料としても役立つでしょう。資金繰り表の作り方や、支払いの優先順位の決め方は、資金ショートしそうなときの対処法でも解説しています。
資材の仕入れ条件や重機の持ち方を見直す
入金を早めるだけでなく、支払いを平準化する工夫も資金繰りの改善につながります。付き合いの長い資材の仕入れ先に、支払いサイトを延ばしてもらえないか相談してみましょう。まとめて発注する代わりに支払条件を見直してもらうなど、取引の実績を交渉材料にできることもあります。
また、稼働率の低い重機や車両を保有していると、購入代金やローンの返済、保険料、維持費が固定費として重くのしかかります。使う頻度によっては、リースやレンタルに切り替えたほうが手元資金を残しやすくなるでしょう。使っていない重機を売却すれば、まとまった資金を確保することもできます。
工事代金(売掛金)をファクタリングで現金化する
すでに完成して請求済みの工事代金があるのに、入金が数か月先で今月の支払いに困っている。そんなときに有効なのがファクタリングです。まだ入金されていない工事代金の請求書をファクタリング会社に売却し、入金日より前に現金を受け取れます。
借入ではないので返済は不要で、審査では自社の業績よりも元請や発注者の信用力が重視されます。取引先に通知しない「2社間ファクタリング」なら、元請に資金繰りの事情を知られる心配もありません。オンラインで申し込んで最短即日で入金されるサービスもあります。
ただし手数料がかかるため、利益率の低い工事で使うと利益がほとんど残らないこともあります。たとえば、仮に500万円の工事代金を手数料5%で売却すると、手数料は25万円です。工事の粗利が1割程度なら、利益の半分近くが手数料に消えることになります。急場をしのぐ手段として、必要なときに必要な分だけ使うのが賢い使い方です。仕組みや選び方は、ファクタリングで即日資金調達する方法で詳しく解説しています。
日本政策金融公庫や制度融資でつなぎ資金を確保する
工事の受注が決まり、入金までの期間に余裕があるなら、融資でつなぎ資金を確保するのが最も低コストです。日本政策金融公庫の融資や、自治体と信用保証協会が連携した制度融資などが選択肢になります。
金融機関によっては、特定の工事の請負代金を返済原資とする短期の融資に対応している場合もあります。ただし、融資は申し込みから入金まで数週間かかるのが一般的です。資金が足りなくなってから慌てて申し込むのではなく、資金繰り表で不足が見えた段階で相談しましょう。融資を断られてしまった場合の対処法は、銀行融資を断られたときの資金調達方法をご覧ください。
建設業でファクタリングを利用するときのポイント
建設業はファクタリングとの相性がよい業種ですが、利用するにあたっては押さえておきたいポイントがあります。
まず、対象になるのは金額と支払期日が確定した売掛債権です。工事が完成して検収が済み、請求書を発行している工事代金が基本になります。まだ着工していない工事や、金額が確定していない工事は対象になりにくいため、注意してください。
次に、元請や発注者の信用力が審査を左右します。公共工事や、経営が安定した元請の工事代金であれば、審査に通りやすく、手数料も抑えやすくなるでしょう。
また、契約書に債権譲渡を禁止する特約が入っていないかも確認しておきましょう。2020年4月施行の改正民法により、譲渡制限の特約があっても債権の譲渡自体は有効とされましたが、取引先との関係に配慮して、契約内容を把握しておくことが大切です。
最後に、ファクタリング会社選びも重要になります。手数料の目安や運営会社の情報を公開しているか、2社間に対応しているか、オンラインで手続きが完結するかを確認しましょう。金融庁は、ファクタリングを装って高金利の貸付けを行うヤミ金融業者に注意するよう呼びかけています。手数料が極端に高い業者や、債権の買い戻しを求める業者は避けてください。
建設業の資金繰りでやってはいけないこと
資金繰りが苦しいときほど、目先の対応で状況を悪化させてしまうことがあります。次のような対応は避けましょう。
- 資金繰りを確認しないまま、大型工事や複数の工事を同時に受注する
- 職人や協力会社への支払いを、連絡なしに遅らせる
- 赤字覚悟の安値受注で、目先の売上を確保しようとする
- 次の工事の前払金を、前の工事の支払いに回す自転車操業を続ける
- 高金利の借入や、違法な業者からの資金調達に頼る
特に職人や協力会社への支払いの遅れは、次の工事で人が集まらなくなる事態を招きかねません。人手不足が続く建設業界では、支払いの信用は受注力そのものといえます。給料の支払いが厳しい場合の対応は、従業員の給料が払えないときの対処法を参考にしてください。
建設業の資金繰りに関するよくある質問
一人親方でもファクタリングは使えますか?
一人親方も個人事業主として、元請への請求書(売掛金)があればファクタリングを利用できます。少額の請求書に対応しているサービスもあるので、入金待ちの間の生活費や材料費が足りないときに検討してみてください。
ファクタリングを使うと元請に知られますか?
利用者とファクタリング会社の2社だけで契約する「2社間ファクタリング」であれば、元請への通知や承諾は不要です。元請からはいつもどおり自社の口座に入金してもらい、そのお金をファクタリング会社に支払います。
民間工事でも前払金を受け取れますか?
前払金制度は主に公共工事の仕組みですが、民間工事でも契約で着手金や中間金を取り決めることは可能です。特に工期が長い工事や、材料費の比率が高い工事では、立て替えの負担を減らすために積極的に交渉してみましょう。
工事中の未完成の工事代金もファクタリングできますか?
ファクタリングの対象は、金額と支払期日が確定した売掛債権が基本です。工事がまだ完成しておらず、請求金額が確定していない場合は、対象外になることが多いでしょう。ただし、出来高払いの契約で、出来高分の請求書を発行している場合などは、相談できる可能性があります。
赤字決算でも資金調達はできますか?
ファクタリングの審査では、自社の決算内容よりも元請や発注者の信用力が重視されるため、赤字決算でも利用できる可能性があります。日本政策金融公庫にも、一時的に業況が悪化した事業者向けの融資制度が用意されているので、あわせて相談してみるとよいでしょう。
まとめ
建設業の資金繰りが苦しくなるのは、工事代金の入金より先に、材料費や外注費、人件費の支払いが来る構造があるからです。
- 建設業法では、元請は支払いを受けてから1か月以内、特定建設業者は引き渡し申出から50日以内に下請代金を支払うルールがある
- 公共工事では、前払金(40%)と中間前払金(20%)を必ず活用する
- 民間工事では、出来高払いや着手金を交渉して立て替えを減らす
- 工事ごとの資金繰り表で、資金が足りなくなる時期を事前に把握する
- 今月の支払いに間に合わないときは、請求済みの工事代金をファクタリングで現金化する
工事代金の入金を待てないときは、手元の請求書でいくら調達できるかをまず確認してみてください。日本資金支援センターは、手数料2%〜、最短即日入金の2社間ファクタリングで、元請に知られずにスマホから申し込めます。必要書類は請求書・通帳のコピー・本人確認書類の3点だけです。
